写真のこと

屋久島の魔物

屋久島の魔物

2002年、屋久島へ行った。その頃はまぁいろいろなところに行っていて、屋久島は確か、映画「もののけ姫」を観てからどうしても行きたくなって行った場所。
当然、いい写真が撮れるに違いないと意気込んでいる。だから準備にも気合いが入った。
意気込んで錦糸町のヨドバシカメラに行く。まず屋久島は雨が多いというからじゃあ雨対策にと、カメラをすっぽり覆える言わばカメラ用の合羽を購入。その上で大きめのクロスなども持っていけば、濡れてもすぐに拭けるだろう等々いろいろ考えてみたりする。
ふと、フロアの中央に、見たことのないフィルムメーカーのフィルムが山積みにされているのが目に入った。書いてあるコピーがいい。

「美しいものをなめらかにきめ細やかに。」
これだ。屋久島の自然を写すにはこういうフィルムがいい。じゃあこれもと、そのフィルムをかなり買い込んで帰った。
実際屋久島は素晴らしかった。鬱蒼とした森。観たことのない植生。その不思議な造形に、バシャバシャと撮りまくって、こりゃいい写真が撮れたぞと喜んで帰ってきた。
いつも現像をお願いしているお店から連絡。
「これ、色調整とかできないからそのままでいいですか? それに、焼くとけっこう高くなりますけど、ホントに焼いちゃっていいですか?」
なになに? なんのこと?...と思って詳しく聞いてみると、なんとそのフィルムはポジフィルムだった。
「ま...マジすか...。」
慌てて店頭に行き、とりあえず仕事でよく見るポジになったそれを観てさらに愕然...ほとんどなにも写ってないコマがたくさん...なんで?
つまりは単純に光量不足。通常はネガだったので、それでもなんとか救えるものも多かったのだが、ポジとなるともうどうしようもない。いや、正確にはできないことはないが、そのためにかかる費用が本気でバカにならない。かと言って、救ってみたところで、その写真がいい写真だとはまったく限らない。
「このままでいいです...。」
すごすごと、その時点で既にいつもよりかなり高額になった費用を支払ってそのポジフィルムを引き取ってきた。
家へ帰って、仕事で使っていたライトボックスに並べてみる。そしてルーペで覗く。もうため息しか出ない。ろくでもない失敗写真が、次から次へと展開する...そりゃそうだ。撮ってる本人は、普通のネガだと思って気楽に撮ってるもの。とりあえずブレとピントだけでもなんとかなってりゃ、後はどうにかなると思ってるもの(というかその認識がそもそも間違っていると思うけど)。
そうして、一生に一度行くかどうかという貴重な屋久島旅行は、ただの一枚もまともな写真を残せないまま終わった。
まさに脱力...である。
それにしても屋久島の魔力、恐るべし。行く前からその魔力は既に働き、ちゃんと確認もせずにポジフィルムを買わせてしまう...恐るべし。
このリベンジ、いつかきっちりとしたい。

写真はイメージ...そりゃそうだ。一枚もまともな写真なんて撮れてなかったもの(号泣)。

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