写真のこと

キタノブルーにはまる

キタノブルーにはまる

映画の世界に「キタノブルー」という言葉がある...らしい。北野武監督作品でよく使われる、画面全体に青味の強い色調のことだと思うのだが、これに一時はまった。
写真というのは、特に今どき誰でも撮れる。しかも既にいろいろな技法にチャレンジしてきたすごい人もたくさんいて、なかなか自分の味を出すのが難しい。そこそこいい写真が撮れたなぁと思っても、なにか既にどこかで見た誰かの写真の模倣に見えてきたりしてしまう。
いやホント、すごい人はたくさんいて、時々驚かされたりするが、写真雑誌などに掲載されている優秀作品等については、実のところあまり感動がない。

なんとか面白い写真が撮れないかなぁと考えていた時、ふとこの「キタノブルー」を思い出した。そだ、写真を、わざと青く撮ってみたらどうだろうと。よくあるセピア色の写真のように、ただそれだけで、なにか違う感じになるような気がする...と(今思えばこの手法も随分と使い古された手法なのだが...)。
どうやったらできるだろう。簡単そうなのは、カメラのモードをモノクロにして、その上で色調を偏らせるというやり方かな...やってみる。どうもつまらん。
う〜ん...で、再度北野作品を見てみる。ああ、青いけどモノクロじゃなくて元の色は残ってるんだなぁ。そか、色温度を偏らせてみよう。
ということでホワイトバランスを壊してみる。
「お、なんか近くなってきた気がする。」
ホワイトバランストは、自然の中にたくさんある色の影響でおかしな偏りが起こらないように、白をちゃんと白として補正すること。色温度というのは、その中の特に青味の調整のことを指す...と、なにかに書いてあった。つまり、ちゃんとした色に見えるように整える機能ということになるが、これをあえて壊してみるのだ。面白い。なんでもない風景が、妙に哀愁を帯びた風景に見えてくる。写っている人は特に寂しさなんて感じていないのに、なにかそういう感情を秘めているように見えてくる。
これだ、しばらくこれで行こう。
しかし問題はあった。
写真を撮りたいと思う場面や対象物に出くわす時の自分の感情としては、別にいつでもそういうマイナー調の気分ではないということ。時にはほっこりした気持ちになっているし、別の感情を持っていることもある。
全部青くなっちゃうと辛いなぁ...。かと言ってノーマルに撮ってもつまらんし...(いや、本当はそんなことはないのだが;;;)。
そだ、赤味がかった方にも偏る設定を追加してみよう。それで、その時の気分で、青赤両方を使い分けたら面白いじゃないか!...とまぁ、この時点で既に「キタノブルー」はすっかり関係なくなってしまっているが、それから2年ほど、そんな状態にはまっていたという次第。
今はもう随分と普通に撮ることが増えて、その目の前にあるものをどうやってそのまま写し取ろうかなどという新しい悩みに直面していたりもするが、それでも時々気が向いて青くしてみたりする。そしてそれがまた楽しい。まぁもっとも、当初考えていたようなオリジナリティーある作品なんていう大それた物には、まだまだまったく到底全然到達できていないのだが...。

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