写真のこと

EOS Kiss Digital初期型の憂鬱

EOS Kiss Digital初期型の憂鬱

EOS Kiss Digitalが出た時は即座に「これは買いだ!」と思ったものだ。デジタル一眼レフが当時14万円程度で買える。今となっては決して安い価格ではないが、当時のデジタル一眼レフと言えば、私のような庶民には到底手が出せるような価格ではなかったのだ。それがこの価格で買える。これは行ける。
当時メインで使用していたカメラは義父からもらった銀塩のEOS5。カメラになどほとんど興味がなかったはずの義父がなんでこんなすごいカメラを持ってるんだ?...と、実家の片隅に放置されたそれを見つけた時に聞いてみると、知り合いのカメラ屋に押し切られて買ってしまったのだとか。で、使ってないからやると言われた。正直、私にはちょっともったいないくらいの高級機だった。
しかしそれでも、広角を中心に随分といろいろやれるようになり、自分としても面白くて仕方がない状態に入っていたその頃。唯一の問題は現像だった。

きっかけは栃木県那須町の、それも山奥に転居したことによる。要は気軽に行ける近所に、現像ができるようなお店がなかった。フィルムを買うのも一苦労といった感じ。そしてもちろん、私が東京でお世話になっていたお店のように、こちらの意図を察していろいろやってくれるようなお店も見当たらない(実際にはある...当時知らなかっただけ;;;)。
それならば自分で焼けばいいという選択もあるかもしれないが、けっこう仕事でも撮る関係で、普通のカラーも外せなかった。
で、途端に面倒になり、当時の仕事場にあったコンパクトデジカメを多用することになる。
しかしこれがつまんないんだなぁ。それに全然画角が足りない。被写体を見て、ここからここまでをこのくらいで写したいなぁなんて思ったら、今までよりかな〜り後ろまで下がった挙げ句、肝心の中心物はけっこう遠くにある、なんてことになる(そりゃそうだ...だったらそれなりの撮り方をすればいいのだが、そんなに器用でもない;;;)。
当然ストレスがたまる。で、やっぱりと一眼を取り出すも、現像を出しに遠方まで行くのがまた面倒になって別のストレスがたまる。
つまりEOS Kiss Digitalは、そういう下地があったところに出てきた。
「よし、これで思い通りに撮れるぞ!」
ついてたレンズだって18mmから55mm。これだけ広角ならすごいのが撮れそうだ!...あれ? 全然広角感がない。え? むしろ今までの28mmの方が広角に見えないか? 数字読み間違ったかな? 18...合ってる。え? んなのおかしいでしょ...。
実は当時知らなかった。センサーサイズってのがあって、それがいわゆる普通の銀塩35mmとは同サイズじゃないってことを...。ネットで調べた時にはもう愕然。
「マジかよ。」
以外の言葉が出なかった。
しかし、通常の1.5から1.7倍相当と書いてある。つまり18mmなら27mmから30mmくらい。ということは、理屈上、今までの28mmとほぼ同じ画角が撮れるはず...なのに見えてるものは全然そんな雰囲気ではない。画質もなんだかぼんやりしている感じで気持ちが悪いことしきり。
「あかん...。」
それからというものもう全然楽しくない。一気に工夫して撮る気が完全に失せた...しかし便利なことは本当に便利なので、仕事やちょっとしたスナップにはむしろ以前より一眼レフを使うようになったというジレンマ...なんだか腑に落ちない(ちなみにこの時期の仕事はPRやクリエイティブ系ではない...だからほとんど記録写真的なもの)。
結果、文句を言いつつ使い続けること5年。律儀なことに、その間2回もの故障をきちんと修理して使っていましたとさ。

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